1.個人としての利益相反のマネジメント・システムの考え方

個人としての利益相反に関するマネジメント・システムの基本的考え方は、第一に、個人的利益に関して透明性を確保することであり、第二に、問題の生じる可能性のあることについて事前に予防措置を取り得る体制を整備することです。そして、第三に、そこで適用される単純で明快なルールをあらかじめ決めておくことです。
また、これらのマネジメント・システムについては、学内の職員等に対して十分な啓発活動を行うとともに、状況の変化に対応できるよう、随時見直しを行うことも重要です。

2.個人としての利益相反のマネジメント・システムの枠組み

個人としての利益相反マネジメント・システムのポイント

(1) 職員等は当該年度に取得見込みの特定の金銭的利益を随時学長に報告する義務がある。ただし、取得見込みの個人的な利益が年度末近くに生じた場合や失念した場合には4月~5月末までの間に前年度分を報告する。
(2) 報告した個人的な利益に変更があった場合も報告する義務がある。
(3) 利益相反アドバイザーは、利益相反に関する職員等の相談にあずかるとともに、必要に応じ報告のあった案件を調査し、利益相反委員会に報告して審議を求めることができる。
(4) 職員等は利益相反委員会の決定に異議のあるときは学長に異議申し立てをすることができる。

利益相反マネジメント・システムの枠組み図

3.個人としての利益相反のマネジメント・システムの内容

(1) 研究インテグリティの確保

近年、研究活動の国際化、オープン化に伴う新たなリスクに対応するため国際的に信頼性のある研究環境を構築することが求められており、その一環として利益相反・責務相反に関する規程の整備の重要性が指摘されています。このため、筑波大学においても透明性を確保し説明責任を果たすために、2022年度に本学利益相反規則の改正を行い、大学活動における情報開示の幅を広げ、より一層の透明性の確保に努めています。

(2) 金銭的情報に関する報告義務

職員等は、産学官連携活動等に係る個人的な利益を新たに取得したり、報告したものに変更があったときは、随時所属長を経由して学長に報告しなければなりません。ただし、取得見込みの個人的な利益が年度末近くに生じた場合や失念したものについては4月~5月末までの間に前年度分を報告します。

【報告の対象となる特定の金銭的利益について】
報告すべき個人的な利益は次のA~Cです。ただし、企業等が企業以外の国内の公共的機関(国、地方公共団体、大学、独立行政法人等)であるときは報告の必要がありません。外国政府関連機関、外国の軍事関連機関、外国の大学などは報告してください。

A 兼業報酬等の個人的な利益が年間合計100万円以上の場合
企業等から得た次の①~③の個人的な利益の年間の合計が100万円以上である場合に報告します。ただし、随時報告する場合は、各年度において取得する見込みの合計とします。企業等は本学との契約関係の有無にかかわらず全ての企業等を対象とします。

      • 兼業に係る報酬
        研究成果の実施料収入若しくは売却による収入(国立大学法人筑波大学職務発明規程(平成16年法人規程第5号)第9条の規定に基づき法人により支払われる補償金を除く。)
        企業等から若しくは企業等の資金を原資として法人から給与の全部若しくは一部が支払われるとき当該給与の全部若しくは一部

B 株式等の保有の場合
株式等を保有している場合は、未公開株式については全て報告し、公開株式については発行済み株式総数の5%以上に相当する場合に報告します。また、新株予約権、合同・合名・合資会社を包含する持分会社の持分等を含みます。当該年度前に取得した株式等も報告してください。当該職員等の配偶者及び生計を一にする一親等内の親族が個人的な利益を受けたときも報告してください。
ただし、株式等の保有については、筑波大学と共同研究契約その他の契約関係にある企業注)の株式等に限ります。

注)「契約関係にある企業等」の事例
・筑波大学の研究成果の移転を受けたことがある
・筑波大学と共同研究、受託研究、学術指導、寄附金等の契約関係がある
・筑波大学から出資又は人的及び技術的援助を受けている(出資については株式等保有も含む。)
・筑波大学に対して、物品又はサービスを提供している

 

C 企業等から職員等に対して提供される筑波大学の管理下にない金銭、物品、役務等であって職務に関連するもの又は職務の信頼性を損なうおそれのあるもの注)の場合
補助金・助成金等のすべての研究資金、奨励金、賞金、寄附金、出張費、講演料、執筆料、物品、役務等であって、本学の管理下にあるものは除きます。例えば、民間の研究支援団体から教員個人が研究資金の提供を受けた場合には、本学では教員個人から学長宛てに寄附してもらい本学でその経理を行う取扱いとしているので本学の管理下にあることになります。このように、実際には、企業等からの本学の管理下にない資金、施設・設備・機器等の物品、役務等の受入れで職務に関連するもの又は職務の信頼性を損なうおそれのあるもの、というのは稀なケースであり、ほとんどは本学の管理下にあると考えられます。ただし、この報告項目は1円から報告の義務がありますので注意してください。

注)「職務に関連するもの又は職務の信頼性を損なうおそれのあるもの」の事例
・職務に関連するもの:外国政府の関連機関等から教員が大学で行う研究のための資金や設備などの提供を受けることなどが想定されます。このほか、企業等から研究設備の提供を受けて研究室で使用していたが、寄附等の手続を取ることを失念していた場合なども含まれます。
・職務の信頼性を損なうおそれのあるもの:外国政府の関連機関等や外国の大学で何らかの役職につきその給与を受けている場合(間接的には職務に関連している場合もあるが、形式的にはしない)や、これらの機関等から高額の贈与品などを受けている場合などで、これらにより第三国の政府機関への技術流出が懸念されることによって国際的な信用の低下につながるおそれのある場合。

 

研究インテグリティ(Research Integrity)とは・・・研究の国際化やオープン化に伴い技術流出等の新たなリスクに対して確保が求められている研究の健全性・公正性のこと(研究活動の透明性を確保し、説明責任を果たすといった、研究者・研究組織としての「規範」)。
なお、2021年に「競争的研究費の適正な執行に関する指針」(2021年12月17日改正)が改正され、新たに研究代表者・研究分担者等について次の義務が課されました。
①他の競争的研究費その他の研究費の応募・受入状況や現在の全ての所属機関・役職に関する情報を応募書類や共通システムに記載する。
②上記①の情報に加えて、寄附金等や資金以外の施設・設備等の支援を含む、自身が関与する全ての研究活動に係る透明性確保のために必要な情報について、関係規程等に基づき所属機関に適切に報告している旨誓約する。
また、上記①又は②に関して事実と異なる記載をしたり、誓約に反した場合は、研究課題の不採択、採択取消又は減額配分することがある旨上記指針に明記されました。

・2018年4月から利益相反の定期的自己申告が電子化されて、これまで以上に簡単に自己申告をすることができるようになりました。
・該当ページには、統一認証システムを使用して入ることができます。
URL:https://riekisohan.sec.tsukuba.ac.jp
※利益相反・輸出管理マネジメント室のトップページのバナーからも入れます。
URL:https://coi-sec.tsukuba.ac.jp/

(3) 職員等から提出された金銭的情報の記録・保存

職員等から提出された金銭的情報については、所掌する利益相反・輸出管理マネジメント室において、適切に管理し、記録として保存します。

(4) 利益相反アドバイザーによる事実関係の検討

利益相反・輸出管理マネジメント室に利益相反アドバイザーが置かれています。利益相反アドバイザーは、利益相反に関する企画、調査研究、アドバイス等の支援、普及等の業務を行います。また、職員等から提出された金銭的情報について検討を行います。その際に、必要があると認めるときは、利益相反アドバイザーは、関係する職員等をヒアリングすることができます。これらの調査の結果、利益相反アドバイザーが、特に十分な議論が必要であると考えるときは、利益相反委員会に報告し、そこでの審議を受けることになります。

(5) 利益相反委員会の設置

ア 利益相反委員会の組織
利益相反・輸出管理マネジメント室に、利益相反に関する事項を審議する機関として、研究担当副学長を委員長とする利益相反委員会を設置します。利益相反委員会の構成は、次のとおりです。

【利益相反委員会の構成】
委員長 研究を担当する副学長
副委員長 人事を担当する副学長
委員
  • 1) 利益相反・輸出管理マネジメント室長
  • 2) 各系長及び附属病院長の推薦に基づき学長が指名する大学教員 各1名
  • 3) 国際産学連携本部本部審議役
  • 4) 総務部長
  • 5) 研究推進部長
  • 6) 産学連携部長
  • 7) 病院総務部長
  • 8) 利益相反アドバイザー
  • 9) その他学長が指名する者 若干人

イ 利益相反委員会の職務

利益相反委員会は、利益相反アドバイザーの報告をもとに、関係職員等のヒアリング等を通じ事実関係を把握し、当該利益相反事例が大学として許容できるかどうかを判断します。
大学として、そのような状況を許容できないと判断した場合には、適切な対応策を決定します。対応策の中には、金銭的利益の放棄(株式の譲渡、兼業先の役員辞任等)や、研究プロジェクトへの不参加等の勧告が含まれます。
また、職員等からその判断についての異議が提出されたときは、利益相反委員会は、必要に応じて適宜情報収集を行い、再度検討を加えて新たな勧告をすることもあり得ます。再審査にあたっては、外部の有識者によって構成される利益相反アドバイザリーボードの意見を聞くことが義務付けられています。

(6) 利益相反アドバイザリーボードの設置

利益相反アドバイザー及び利益相反委員会は、いずれも大学内部の職員により構成される組織であり、したがってそこでの判断は、ときには社会一般の見解とは異なったものとなる可能性があります。したがって、外部の有識者で構成される諮問機関として、利益相反アドバイザリーボードを設置します。
利益相反アドバイザリーボードは、利益相反委員会の判定に対する職員等の異議申立てについての控訴審的な役割を果たすほか、学内の利益相反委員会と随時又は定期的に意見交換をするなど、大学自身が利益相反マネジメントの客観性を維持するのを支援する役割を担うことになります。

(7) 責務相反

      • 責務相反の定義
        責務相反とは、職員等が企業等に負っている責任と大学における当該職員等の責任が両立し得ない状況をいいます。したがって、責務相反の前提として、大学における職員等の職務遂行責任の内容を、特に産学連携活動との関連で明らかにする必要があります。
      • 兼業の趣旨
        本学の職員は、特に定めのある場合を除いて、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてを職務及び責任を遂行するために用い、筑波大学の業務にのみ従事しなければなりません。その特に定めのある場合の一つが兼業です。それは、兼業が職員の有する優れた知識や経験を社会のために活用することであり、本学の使命の一つである社会貢献につながるからです。
      • 兼業の制限
        本学の職員は、任命権者の承認を受けて、勤務時間内又は勤務時間外に筑波大学の職務でない職務又は筑波大学の事業ではない事業に従事することができると定められています。ただし、勤務時間内に兼業して報酬を得るときは、当該職員の給与が減額されることがあります。
        なお、筑波大学では、兼業の総従事時間数は、1年間の総勤務時間数の3割(一部(給与が基本年俸である職員)は4割)を超えないようにしなければならないことが定められています。これは、勤務時間外の兼業にも適用されます。

(8) 外部への説明責任

利益相反マネジメントのために各職員等から提出された情報については、プライバシーに関わる部分は、原則として非開示情報として運用されます。しかし、これら以外の、例えば統計的に処理した情報などについては、利益相反委員会において、毎年定期的に作成し、外部に公表していくこととなります。